今回は、私のボヤキでございます。
「遺伝子」について、教科書やインターネットには、次の様な説明があります。
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中学校の「生物」の教科書では、
『遺伝子の本体は、DNAである』
『遺伝情報を伝えるもののことを 遺伝子 といいます。』
高校の『生物基礎」の教科書では、
『DNAが遺伝情報を担う物質であり、全ての生物は、遺伝情報の担い手としてDNAを持っている』
高校の『生物」の教科書では、
『DNAは塩基配列という形で遺伝情報を保持している。ここでは、転写・翻訳の過程を経て遺伝子が発現する仕組みを学習しよう』
『遺伝情報はDNAの塩基配列に存在し、遺伝子はタンパク質の合成を支配している。』
インターネットでは、
『親から子へと受け継がれる情報を『遺伝情報』と呼び、遺伝情報を親から子へと受け継いでいるものが「遺伝子」です』
『DNAは遺伝子(遺伝情報)を保持している物質として「遺伝子の本体」あるいは「遺伝情報の本体」と呼ばれます。』
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かなり混乱していますよね。これらの、教科書のやインターネットの記述の問題点を列挙すると、
(1)遺伝情報の担い手=DNA、DNA=遺伝情報の担い手だと、勘違いしてしまう。
(2)DNAには、染色体DNA、ミトコンドリアDNA、プラスミドDNA、ウイルスDNA、人工オリゴDNAなど、色々ある、ということに触れていない。
(3)DNAは、遺伝するもの、とか、生命の根源であるかのような誤解を与えている。
(4)「遺伝情報」と「遺伝子」の違いについて、明確な説明がされていない。
(5)「タンパク質の設計図」としての「遺伝子」の記述がない。
(6)体細胞の場合と、生殖細胞系列の細胞の場合と、区別せずに書かれてある。
生物の教科書での、これらの問題点によって、大きな誤解が生じているように、私は思います。
その誤解とは、『体細胞に「遺伝子」を導入すれば、導入された遺伝子は、子孫に遺伝される』。これは大きな誤解です。
プラスミドDNAや、ウイルスDNAにも「遺伝子」がありますが、それは、生殖細胞や配偶子(卵子、あるいは精子)の核にある染色体DNAに挿入されない限り、子孫に遺伝することはありません。
「遺伝子」は、単なる「タンパク質の設計図」です。「遺伝子」は、子孫に遺伝されるかどうかとは、関係ありません。子孫に遺伝される遺伝情報は、生殖細胞や配偶子(卵子、あるいは、精子)の核の中にある染色体DNAがその大部分を担っています。体細胞の核の中にある染色体DNAが担っている情報は、子孫には遺伝しません。にもかかわらず、このような誤解を生んでしまっています。
なぜ、この様な教科書の記述になってしまったのか。その原因は、おそらく、「メンデルの法則」==>遺伝子の存在の予測==>「遺伝子」の正体はDNAだという発見、と言う、歴史をなぞっているからだと思います。歴史は歴史。今の生命科学は今の生命科学。学校の「生物」の教科書には、今の生命科学に関して、記述して欲しいと思うのは、私だけでしょうか。
学校の「生物」の教科書で学んだ人や、そういう人によって書かれた、インターネットの情報が溢れています。これらの情報を見て「遺伝子」について学んだ人は、私の今回のブログを読んで、混乱の渦に巻き込まれてしまったかもしれませんね。申し訳ありませんでした。
現代生命科学を元に「遺伝子」について記述するとすれば、どういう書き方になるのか、次回以降のブログで、私なりに書いてみようと思っています。
次のような内容で、順番に、次回以降、ご説明したいと思います。
(1)DNAとは
(2)染色体とは
(3)遺伝情報とは
(4)遺伝子とは
(5)細胞が作る「タンパク質」とは
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