エクソソーム製剤

日本再生医療学会

(1)新型コロナ研究の進展
(2)健康長寿への挑戦
(3)「ヘテロ」という言葉
(4)エクソソーム製剤   <==
(5)実験解析のニュートレンド

日本再生医療学会の総会で、私が感じたことについて、発信します。今回の話題は『エクソソーム製剤』です。

エクソソームは、医薬品を体内に送り込む方法(DDS:Drug Delivery System)の候補として、有力だと言われています。似た様なものとして、すでに、リポソーム(liposome)や、脂質ナノ粒子(LNP:Liquid Nanoparticle)が実用化されていますが、エクソソームは、脂質二重膜に、膜タンパクや糖鎖が発現している、という特徴があります。この特徴によって、医薬品を、狙った臓器や、固形がんに届けることが可能ではないか、と、注目されています。

と、まあ、言われてはいますが、私が、今回、総会で聞いた印象では、とても難しいように思いました。まず、聞いたことを以下に書き並べてみます(間違っていたらごめんなさい)。

(1)エクソソームを静脈注射した場合、エクソソームは速やかに、肝臓、脾臓、肺に集積する。
  多くのエクソソームは、肝臓と脾臓ではマクロファージに、肺では血管内皮細胞に取り込まれる(マウスでの確認)。
(2)幹細胞培養液からエクソソームを抽出するには、TFF(Tangential Flow Filtration)と、AC(Affinity Column)を使う。
  現在、よく使われている超遠心は、実験には使えても、製剤と言う意味での実用には向いていない様です。ただし、TFFとはどう言うものかは、私に聞かないでください(暴)。
(3)幹細胞培養液からエクソソームを抽出する場合、幹細胞にストレス(例:低酸素培養など)を掛けた方が、良いエクソソームを得ることができる。
  どう良いのか、質問したかったのですが、遠慮してしまいました。
(4)エクソソーム製剤の品質評価としては、膜に発現しているタンパクや糖鎖、内包するmiRNA等の成分とその量(少なくとも、有効成分の量)を明らかにする必要がある。
  「製剤」と言うからには当たり前なのかもしれませんが、細胞製剤ではそこまで要求されていませんよねーー?。成体幹細胞から得られるエクソソームには、数百以上の種類のmiRNAが含まれているそうで、それを調べるだけでも気が遠くなります。
(5)成体幹細胞からエクソソームを得る場合、ドナーによるばらつきが大きい。
   エクソソーム製剤の場合、ドナーがエクソソームの「原料」にあたります。ドナーによってバラツキが大きいそうです。これは致命的?

一度ドナーから得た幹細胞を不死化した細胞株を培養すれば品質は安定するのでしょうが、不死化したことによる影響が気になりますね。私の妄想ですが、iPS細胞を間葉系幹細胞に分化誘導し、培養上清からエクソソーム分画を回収、という方法は、実現できないものでしょうか?

一番、気になったのは、エクソソームは、ドナー、培養条件、環境(ストレスの与え方、など)によって、分泌されるエクソソームに含まれる物質の種類や量が大きく変動する、と言うことです。エクソソームが有効成分を含んでいるとしても、その成分の含有量が一定しないと言うのであれば、エクソソーム製剤として承認されることはないと思います。「自由診療」として使用することは可能かもしれませんが、有効成分の量が不安定なままでは、「有効性」についての担保が取れずに、治療に供されることになります。
(参考)「エクソソームを含む細胞外小胞(EV*)を利用した治療に関する報告書」
  http://immunology.w3.kanazawa-u.ac.jp/000249829.pdf

以上が、日本再生医療学会の総会で私が感じたことですが、その後、家に帰って、試しにネットで「人工エクソソーム」というキーワードで検索してみました。そうすると、結構たくさん、検索に引っかかりました。もし興味があれば、一度検索してみることを、お勧めします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました