新型コロナウイルスに対応する次世代型のワクチンとして、その他にもいくつか出てきています。
(2)コブゴーズ筋注(塩野義製薬(UMN ファーマ))(参考1)
これは、培養工場で新型コロナウイルスのスパイクタンパクを作り、アジュバント(参考2)を加えて製剤化し、それを筋肉注射する、というワクチン(組み換えタンパクワクチン)です。ファイザーやモデルナのmRNAワクチンは、mRNAを作り、製剤化し、筋肉注射し、体内の自己細胞内でスパイクタンパクを作るというワクチンでしたが、どれだけの量のスパイクタンパクが体内で作られるか、体質によってさまざまであり、スパイクタンパクの総量コントロールが不確実である、という懸念点がありました。なぜなら、1つのmRNAから、1つのスパイクタンパクが作られるわけではなく、複数のスパイクタンパクが作られる場合もあるからです。その点、あらかじめ培養工場でスパイクタンパクを作り、それを筋肉注射する、この「組み換えタンパクワクチン」は、体内に投入するスパイクタンパクの総量コントロールが確実に実施できる、と言えると思います。
今回のこのワクチンでは、培養工場でタンパク質を作る方法として、昆虫の細胞を使うそうです。昆虫の細胞に、スパイクタンパクの設計図である遺伝子を導入し、昆虫の細胞を増殖するという方法をとっています。その昆虫の細胞は、培養タンクの中で、大量のスパイクタンパクを産生します。このような遺伝子組み換えによる製薬の技術は、今回目新しい方法というわけではなく、大腸菌を使った「インスリン」というタンパク質の製造など、既存の技術です。また、B型肝炎ウイルスワクチンも、組み換えタンパクワクチンであり、ワクチンの製造方法としては、既存の技術である、と言えると思います。
ただし、mRNAワクチンと比べて、あらかじめ培養工場でスパイクタンパクを作るという手間や時間を要する、という問題点があります。また、体内に投入したスパイクタンパクによって、どのような種類の抗体が、どういう量、作られるのか。さらに、投入したスパイクタンパクはどのように体内で分解されるのか、といった点について、体質によるばらつきがあることは、mRNAワクチン同様、不確実さは残ると思います。
この「コブゴーズ筋注」は、起源株に対するものが承認を受けており、現在、オミクロン株JN.1に対するものを開発中とのことです。
(参考1)「コブゴーズ筋注」 https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2024/06/20240624.html
(参考2)「アジュバント」 https://www.shionogi.com/jp/ja/innovation/adjuvant.html
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