免疫力とは (3)

免疫力とは

免疫には、自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫は、全ての動物(クラゲや昆虫も)に備わっている仕組みで、生まれた時から備わっています(つまり遺伝子に組み込まれています)。一方、獲得免疫は、ヒトが成長する過程で経験して獲得する免疫です。この獲得免疫の仕組みは、進化の過程で、脊椎(せきつい)動物(注1)が現れたときに、脊椎動物に備わった仕組みだそうです。ヒトも、その、脊椎動物です。

脊椎動物では、自然免疫と獲得免疫の分業体制が重要です。また、免疫が強くなってはまずい場合に免疫を抑制したり、あるいは、免疫機能が強くなって異物を排除した後、免疫機能を弱めて元の体制に戻す仕組み(免疫寛容と言います)も、重要です。

自然免疫の説明では、通常は、皮膚の存在とか、くしゃみ、鼻水、せき、涙といった物理的に排除する仕組みの話から始まるのですが、多くの人が関心を寄せるのは、やはり、異物が体内に侵入した後の、免疫細胞の働きだと思います。外部からの異物(細菌、ウイルス、タンパク質、など)は、切り傷や火傷で皮膚が薄くなった部分や目の角膜、鼻腔、気管支、肺胞、胃、十二指腸、小腸、大腸といった、「内なる外」に面している、粘膜や上皮組織から侵入してきます。皮膚や粘膜には多くの種類の細菌が共生しています。自然免疫の役割を担っている免疫細胞や上皮細胞は、皮膚や粘膜に「抗菌ペプチド」(注2)を分泌しています。抗菌ペプチドは細菌の細胞膜に穴をあけることで殺菌作用を発揮し、皮膚や粘膜に共生している細菌が増えすぎないようにしています。抗菌ペプチドは、ペニシリンなどの抗生物質と異なり、耐性菌を生み出しにくい性質があるそうです。今、耐性菌の出現の問題がクローズアップされていますが(参考(2))、その解決手段としても、抗菌ペプチドが注目されています(参考(3))。

自然免疫に関係する免疫細胞には、以下のものがあります。

  • 樹状細胞、マクロファージ(単球)、好中球
  • NK細胞、NKT細胞、制御性T細胞
  • マスト細胞、好塩基球,好酸球

自然免疫に関する役者はこれだけあります。多いですね。
次回は、これらの細胞について、順番に、できるだけわかりやすく、かつ、的確な説明ができるよう、チャレンジしたいと思います。

(注1)脊椎(せきつい)動物: 背骨がある動物(魚類も含む)で、赤い血液を持つ。ナメクジウオが、脊椎動物の祖先の形態に非常に近いのでは、と言われている。ナメクジウオは、脊椎動物に進化する直前の「脊索動物」で、ナメクジウオの血液は無色。「ウオ」という名前ではあるが、ナメクジウオは魚類ではなく、魚類(脊椎動物)に進化する直前の形態(脊索動物)。

(注2)ペプチド: 小さなタンパク質。タンパク質は非常に多くのアミノ酸が連なってできており、ペプチドは、アミノ酸が約十個から数十個が連なっている、小さなタンパク質。

<参考文献>
(1)抗菌ペプチド ヤクルト中央研究所
 https://institute.yakult.co.jp/dictionary/word_3972.php
(2)「医療現場での耐性菌増加」https://amr.ncgm.go.jp/general/1-3-1.html
(3)「次世代中分子ペプチド医薬品創出に向けた基盤技術の開発」
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/142/10/142_22-00115/_pdf



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