免疫力とは (4)

免疫力とは

免疫は、粘膜免疫腸管免疫全身免疫の3つに分類できるそうです。
昔は、全身免疫しか注目されず、生物の教科書にも、全身免疫に関することが載っているのですが、粘膜免疫、腸管免疫が注目されてきたのは、最近のようですね。今回は、粘膜免疫に着目してみましょう。
粘膜免疫は、目の角膜や、口腔、鼻腔、咽頭、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸などにある粘膜に備わっている免疫の仕組みです。外部から粘膜に侵入する異物として、例えば、ウイルス、細菌、真菌(カビ)、細菌や真菌が出す毒素、寄生虫、ダニ、花粉、食物、果汁、などがあります。粘膜には粘液層があり、ネバネバした液体で覆われていて、その粘液層に細菌が住んでいます。そのような細菌を常在菌と言います。粘液層に対しては、腸の上皮細胞からは、前回申し上げた抗菌ペプチドが分泌されています。抗菌ペプチドは、上皮細胞に近い方が濃いので、上皮細胞から遠い粘液層(外粘液層)に、常在菌が多く住んでいます。上皮細胞に近い粘液層を、内粘液層と言いい、内粘液層には、細菌はほとんど住んでいないそうです。

図は、参考資料(5)からの引用。
また、粘液層に対しては、「IgA」という抗体も分泌されています。IgA抗体は、涙、唾液、鼻汁にも含まれていています。一般に抗体(免疫グロブリンタンパク質)は、特定の種類のタンパク質(ペプチド)に対してのみに効く(特異性と言います)のですが、粘膜免疫におけるIgA抗体(分泌型IgA抗体)は、多種類の細菌や毒素に働くIgA抗体(特異性がない)と、特定の細菌や毒素に対して働くIgA抗体(特異性がある)が、混在しているそうです。IgA抗体は、内粘液層に侵入してきた細菌や毒素に取り憑き、細菌や毒素の活動を弱らせたり毒素を中和したりします。しかし、IgA抗体は、ビフィズス菌や乳酸菌といったいわゆる善玉菌に対しては、細菌の活動を弱らせるのではなく、逆に、粘液層への定着を助けるそうです(参考資料(2)、(4))。IgA抗体って、不思議ですね。
なお、IgA抗体には、このように粘液層に分泌される、分泌型IgA抗体のほか、血液(血清)に含まれているIgA抗体(血清型IgA抗体)もあるそうです。

<参考資料>
(1)「腸内細菌が粘膜の内側まで入るタイミング」
 https://fmt-japan.org/post/7269
(2)「腸管IgA抗体による腸内細菌制御のメカニズム」
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/55/9/55_596/_pdf
(3)「免疫グロブリン IgA クラス」
 https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/antibodies/antibodies-learning-center/antibodies-resource-library/antibody-methods/immunoglobulin-iga-class.html
(4)「腸内細菌叢制御に向けた経口投与型抗体医薬の開発」
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/dds/37/5/37_395/_pdf
(5)「腸内細菌異常に対するアプローチ」
 https://kawasechiro.sakura.ne.jp/info17.html

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