染色体とは

雑感、その他

(1)DNAとは
(2)染色体とは <==
(3)遺伝情報とは
(4)遺伝子とは
(5)細胞が作る「タンパク質」とは

今回は、「染色体とは」というテーマで、私なりの説明を試みたいと思います。

細胞を、「酢酸カーミン」などの染色液で染色すると、細胞の核の中や、細胞分裂期の場合は、細胞質に、棒状のものが赤く染まります。この、赤く染まる物質を染色体と言います。
「染色体」の意味としては、狭義のものと、広義のものがあります。

狭義: 細胞分裂期に観察される、棒状の物質。
広義: 細胞分裂期だけでなく、分裂期でないとき、細胞の核の中に、比較的ほどけた状態で存在する場合も含める。

よく見かける、染色体の棒状の絵は、狭義の染色体です。「染色体DNA」とかいう場合の「染色体」は、広義の染色体です。
染色体は、「染色体DNA」と「ヒストン」と言う円盤状のタンパク質からできています。染色体DNAは、2重らせんの構造をした細長い紐状の物質ですが、紐の各所でヒストンに巻き付いています。染色体は、核の中では比較的ほどけた状態ではありますが、ヒストンに巻き付いている部分は凝集しています。

図の引用:https://manabu-biology.com/archives/原核生物に染色体はあるのか.html

細胞分裂期に、核内にあった染色体は棒状に凝集し、核膜が消え、細胞質内で並びます。細胞分裂期と、そうでない時期で、外見上の形が全く異なるように変化しますが、同じ物質です。

図の引用:https://ja.wikibooks.org/wiki/高等学校生物/生物I/細胞の増殖

以降は、特に断りがなければ、「ヒト」に関するお話しとします。
細胞分裂期に観察される棒状の染色体は、ヒトの体細胞の場合、単核の体細胞1細胞あたり、23対(46本)、観察されます。

1対の染色体の片方は、母親由来の染色体、もう片方は、父親由来の染色体です。

1本の棒状の染色体は、1本の染色体DNAと、多数のヒストンで構成されています。ですので、単核の体細胞1細胞あたり、染色体DNAは、23対(46本)ある、ということになります。これは、細胞分裂期でないときに染色体が細胞の核の中にある場合も同じです。

染色体DNAは、1染色体あたり1本ですが、活性酸素や紫外線など、さまざまな要因で頻繁に切断や破損が起きているそうです。切断や破損が起きるたびにDNA修復酵素によって修復されているそうです。その修復ですが、細胞分裂期に、もし父親由来の染色体のDNAの一部が壊れた場合、母親由来の染色体のDNAの一部を参照して、修復されます。もし母親由来の染色体のDNAの一部が壊れた場合、父親由来の染色体のDNAの一部を参照して、修復されます。この様に、私たちの体の中では、父親と母親が協力しあって、DNAを修復しているのですね。体の中の父親と母親は、喧嘩をせず、仲良くして欲しいものです。

1対の染色体のうち、例えば母親由来の染色体ばかりを23本集めれば、それを構成する染色体DNAの本数は、23本になりますが、それに男性のY染色体を加えた、24本分のDNAを1セットとし、それらのDNAを構成している塩基(A:アデニン、G:グァニン、C:シトシン、T:チミン)の配列情報を読み取ったものを「ゲノム」と言います。ヒトの場合、ゲノムの塩基配列の数は、約30億、あるそうです。

ヒトのゲノムは、どんな国のヒトでも、99.9%同じです。違うのは、血液型や、肌や髪の毛や目の色、お酒に強い弱い、背の高さや、顔かたちなど(そういうのを「形質」と言います)に関係するDNAの塩基配列は異なるケースがあります。しかし、その違いは、ゲノムの塩基配列の0.1%に過ぎず、その他の99.9%の塩基配列は同じだそうです。この99.9%の共通部分が、「ヒト」という種、「ホモサピエンス」を定義づけています。人類みな兄弟、と言うことですね。

なお、生殖細胞から作られる配偶子(卵子、あるいは、精子)の染色体は、父親由来と母親由来の染色体の対にはなっておらず、1細胞あたり、単体の染色体が23本、あります。卵子が受精すると、精子の染色体と合わさって、23対(46本)になります。

ちなみに、卵子、精子にあるミトコンドリアの中に、ミトコンドリアDNAがありますが、受精した時、卵子内において、精子のミトコンドリアは分解され、精子のミトコンドリアDNAも分解されるそうです。よって、子供には、母親のミトコンドリアDNAしか、伝わらないそうです。母は偉大なりですね。
 参照:ミトコンドリア https://ja.wikipedia.org/wiki/ミトコンドリア
    ミトコンドリア・イブ https://ja.wikipedia.org/wiki/ミトコンドリア・イブ

(補足)ミトコンドリアDNAの塩基の配列情報を読み取ったものを「ミトコンドリアゲノム」と言います。それに対して、染色体DNAの塩基の配列情報を読み取ったものを「核ゲノム」と言ったりします。
  (参考:https://www.amed.go.jp/news/release_20200306.html

生殖細胞が減数分裂して配偶子(卵子、あるいは、精子)が作られる過程で、生殖細胞の、母親由来と父親由来の染色体の腕の一部が交叉し、母親由来と父親由来の染色体の一部が入れ替わる現象が生じます。そして、それぞれの染色体を持った、4つの配偶子(卵子、あるいは、精子)ができます。母親由来と父親由来の染色体の一部が入れ替わるかどうか、あるいはどの位置で入れ替わるか、あるいは、入れ替わる箇所が何箇所なのか、は、ランダムに発生します(この現象のことを「シャッフル」と呼ぶ人もおられます)。このようにしてヒトは、多様な子孫を残します。

図の引用:https://www.jst.go.jp/pr/info/info139/zu1.html

男性の場合、生殖細胞の23番目の染色体は、X染色体とY染色体のペアーになっています。例えば、上図で、赤い染色体がX染色体で、青い染色体がもっと短くてY染色体だったとしましょう。そして、わかりやすくするために、交叉による染色体の部分入れ替えが発生しなかったと仮定すれば、そうすると、生殖細胞が減数分裂して出来上がった4つの精子のうち、2つの精子にはX染色体が入り(X精子と言います)、残りの2つの精子には、Y染色体が入る(Y精子と言います)ことになります。卵子は必ずX染色体ですので、卵子にX精子が受精すれば、23番目の染色体はXXとなりますので、女の子が生まれ、卵子にY精子が受精すれば、23番目の染色体はXYとなりますので、男の子が生まれます。女の子が産まれるか、男の子が生まれるかは、女性(卵子)には責任がありませんので、女性に精神的負担を負わせるのは酷というものです。タイムマシーンに乗って、昔の武家の女性たちに、謝りに行かなくてはなりませんね。

子供目線で子供自身の体にある染色体を観察したとしましょう。子供の体細胞にある母親由来の染色体は、母親の卵子の染色体ですので、上図の4つのパターンの配偶子のうちのいずれかです。つまり、子供の体細胞にある母親由来の染色体は、母方のおばあちゃんの染色体、あるいは、母方のおじいちゃんの染色体、あるいは、それらが混ざった染色体だと言うことになります。子供の体細胞にある父親由来の染色体は、父親の精子の染色体ですので、上図の4つのパターンの配偶子のうちのいずれかです。つまり、子供の体細胞にある父親由来の染色体は、父方のおばあちゃんの染色体、あるいは、父方のおじいちゃんの染色体、あるいは、それらが混ざった染色体だと言うことになります。どうりで、子供は、おじいちゃん似だったり、おばあちゃん似だったりするわけです。納得ですね。

余談ですが、「男」と言う存在は、多様性を生むために作られた存在だと言われています。ヒトと同じ「真核」細胞である酵母(パン酵母、などの、あの酵母)の仲間である「分裂酵母」の場合、酵母の生活環境が良い時、各酵母は、そのまま細胞分裂して仲間を増やします。細胞分裂した細胞の染色体は、元の細胞の染色体と全く同じです。要するにクローンですね(これは多細胞生物での体細胞分裂に相当します)。しかし、酵母の生活環境が非常に厳しくなった時、2つの異なる酵母が接合して減数分裂し、多様な染色体DNAを持った多くの「胞子」を作ります。「胞子」はヒトの「配偶子(卵子、あるいは、精子)」に相当します(これは多細胞生物での生殖細胞の減数分裂に相当します)。

図の引用:http://msmicrotubule.blogspot.com/2010/01/blog-post_07.html

多様な染色体DNAを持った多くの「胞子」のうち、厳しい環境下で耐え抜いた「胞子」だけが生き残ります。やがて、生活環境が良くなれば、胞子が発芽して、元のような「酵母」が生まれるそうです。

平和で生活環境が良い社会で、「男」の存在が薄くなるのは、酵母もヒトも同じなのですね。私も捨てられないように頑張らねば。

今回の私の説明は以上ですが、間違っていたら、ごめんなさい(汗)。

コメント

タイトルとURLをコピーしました