DNAとは

雑感、その他

(1)DNAとは <==
(2)染色体とは
(3)遺伝情報とは
(4)遺伝子とは
(5)細胞が作る「タンパク質」とは

今回は、「DNAとは」というテーマで、私なりの説明を試みたいと思います。

DNAは、デオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic Acid)の略。リン酸、糖(デオキシリボース)、塩基(A:アデニン、G:グァニン、C:シトシン、T:チミン)で構成される高分子の物質です。2重らせんの構造をしています。(参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/デオキシリボ核酸

DNAは、非常に耐久性があります。縄文人の人骨からDNAを採取して分析できる程、保存性がいいそうです。ただし、酵素、活性酸素、紫外線、放射線などに弱い、と言う特徴があります。

DNAは、動物の細胞の中にも、植物の細胞の中にありますので、私たちが動物や植物を食べれば、DNAも食べていることになります。ただし、発酵食品の場合は、酵母菌や乳酸菌などが分泌する酵素によってDNAは分解されるようです(不確かですが)。

DNAを構成する、アデニン、グアニンといった「核酸」は、プリン体を構成する塩基ですので、DNAを大量に含む食品、つまり、細胞密度が大きい食品、例えば、干物や、たらこ、肝、麦芽などは、プリン体が多い食品だと言われています。

普通の食事をしておれば、我々は、常に大量のDNAを食べているわけですが、DNAを食べると、DNAの一部は、膵臓から分泌される「ヌクレアーゼ」と言う消化酵素で分解され、「核酸」という栄養分として吸収されます。分解されなかったDNAは、高分子ですので、腸では吸収されずに、排出されます。

DNAは、細胞の核の中にあるDNA(染色体DNAといいます)が有名ですが、そのほかにも、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、細菌のDNA、ウイルスのDNA、など、さまざまなDNAがあります。細菌には、環状のプラスミドDNAもありますが、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNAも、プラスミドDNAです。人工のプラスミドDNAもあります。 海水や湖水や空気中にも、細菌やプランクトンの死骸由来のDNAや、魚のフンに含まれているDNAなどが漂っています(環境DNAといいます)ので、私たちの身の回りは、DNAだらけだといっても差し支えないと思います。

DNAは、縄文人の人骨から採取できるほど耐久性が高い(耐久年数は数千年と言われています)ので、コンピュータの磁気デバイスに代わる、次世代の超長期保存用データメモリーとしても有望視されています。Microsoft社は、その様なDNAメモリーの開発に注力しているようです。

DNAのその他の利用としては、DNAマイクロアレイがあります。DNAの断片をガラス板に高密度に並べたものです。サンプルに含まれる、mRNA(メッセンジャーRNA)の種類と量を検査するために使用します。この様に、DNAは、細胞から取り出しても、DNAという物質としての機能は働く、そういう物質です。

さて、その様なDNAと言う物質を、生物はどのように利用しているのでしょうか。
地球上の生物はみな、DNAを構成する塩基(A:アデニン、G:グァニン、C:シトシン、T:チミン)のうち、3つの塩基の組み合わせを、ある特定のアミノ酸に対応させ、DNA上に、複数のアミノ酸情報を連結した配列を表現しています。複数のアミノ酸を連結すればタンパク質になります。ですので、そういう配列は、タンパク質の設計図だと言えます。不思議なことに、地球上の生物は、みな、3つの塩基の組み合わせを、どのアミノ酸に対応させるのか、共通なんです(深海やメタンハイドレート等の中に例外的な生物が潜んでいるかもしれませんが)。

また、生物の細胞では、タンパク質を、どういうタイミングで、どの様に作るのか、作り過ぎればどの様に減らすのか、その様な調整を行うための情報の記述にも、DNAを使用しています。これをコンピュータのソフトウエアに例えますと、タンパク質のアミノ酸配列を表現した場所は、データ領域、タンパク質をどういうタイミングでどの様に作るのか、作り過ぎればどの様に減らすのか、調整を行うための情報を記述した場所は、プログラム領域、といった感じでしょうか(注意:生物はコンピュータの様な仕組みで動作しているわけではありません)。

ただし、DNAにあるタンパク質の設計図や、その調整を行うための機能は、DNA単独では動作しません。その様なDNAの情報を読み取るためのDNA読み取り酵素(RNAポリメラーゼ)や、タンパク質合成のための原料であるアミノ酸、タンパク質合成を実行するためのリボソーム、合成に必要なエネルギー源としてのATP(アデノシン三リン酸)が必要です。逆に言えば、試験管に、DNAと、それらを入れれば、タンパク質を合成することができます。実際に、「無細胞系タンパク質合成」と言って、ライフサイエンスの実験などで必要なタンパク質を合成するための方法として、実用化されています。
(参考:https://www.pros.ehime-u.ac.jp/about/

一方、DNAは、DNA複製酵素(DNAポリメラーゼ)を使って、複製することができます。DNA複製酵素を使って、微量のDNAを複製し、DNA検査装置で検査できるほどの分量に増やす”PCR”と言う手法があります。PCRは、新型コロナウイルス感染の有無を調べるために、有名になった手法です。新型コロナの場合は、新型コロナウイルスのRNAを、逆転写酵素を使っていったんDNAに変換し、その後、PCR手法を使って試験管の中でDNAを増やし、検査装置にかけて、検査します。

生物は、このような、DNAを複製できる性質を利用して、細胞分裂時に染色体DNAをコピーしたり、生殖細胞、配偶子(卵子、あるいは精子)を通して、子孫にDNAを渡したりしています。ですので、DNAのことを「遺伝子の本体」だと言う人がおられますが、DNAは単なる物質であって、生物が、子孫に遺伝情報を伝えるために、DNAという便利な物質を利用しているに過ぎません。

DNAだからといって、DNAに魂が宿るとか、DNAを生命の根源だとか、神秘的には考えず、ましてや、魚のDNAを食べると魚人間になるとか、そういった余計な心配をする必要はありません。DNAは、生物が利用している物質に過ぎませんので、もっとドライに考えた方がいいと思います。

DNAの扱いについて、注意をすべきなのは、始原生殖細胞や、生殖細胞、配偶子(卵子、あるいは精子)の染色体DNA、受精卵の染色体DNAです。これらの細胞の染色体DNAは、子供や子孫に影響しますので、特に放射線には要注意です。

余談ですが、原始地球の時代、生物は、DNAではなく、RNAを利用していた、という説があります(RNAワールド仮説)。宇宙全体を探せば、DNAでもRNAでもない物質を利用している生物がどこかに存在していても、おかしくはないと思います。

今回の私の説明は以上ですが、間違っていたら、ごめんなさいね(汗)。

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