「エクソソーム」ブーム

雑感、その他

「エクソソーム」の研究が、今、台風の目であり、今、最も熱い分野なのではないでしょうか。

2018年に放送された「NHKスペシャル 人体 神秘の巨大ネットワーク」をご覧になりましたでしょうか?。タモリさんと山中伸弥先生が出演された番組です。この番組の中で何度も語られた、臓器間で交わされる「メッセージ物質」。具体的には、「ホルモン」、「サイトカイン」、「マイクロRNA」など。この中で、「マイクロRNA」は、エクソソームという細胞外小胞に包まれて、運ばれます。そのエクソソームは、厳密には定義が困難で、そのため「エクソソームを含む細胞外小胞(EV)」という表現がよく用いられます。これらの細胞外小胞(EV)は、動物の体液、果汁、細菌の周囲、様々な場所に存在しています。その「エクソソームを含む細胞外小胞(EV)」に関する研究が活発に行われています。しかしながら、問題点もたくさんあると思います。

細胞外小胞(EV)の働きについて、報告されているものについて、例を列挙しますと、

(1)臓器移植での拒絶反応は、移植細胞が放出するエクソソームが重要な働きをしている可能性があることが報告されています。
(2)生乳に含まれるミルクエクソソームは、胃や十二指腸や腸の消化液やマクロファージによる貪食を潜り抜け、腸の壁から血液に侵入して、人体の免疫細胞を活性化する可能性が報告されています。
(3)体内のがんが大きくなって、腫瘍中心部のがん細胞の栄養分が不足してくると、がん細胞は、エクソソームを放出し、血管を通して、転移先の開拓を行っている可能性が報告されています。
(4)体内のがん細胞のエクソソームは、がん細胞を攻撃する免疫細胞の活性を弱める働きをしている可能性が報告されています。
(5)脂肪由来間葉系幹細胞のエクソソームは、マクロファージに貪食され、そのマクロファージが、肝硬変を改善する働きがある可能性が報告されています。
(6)骨髄由来間葉系幹細胞のエクソソームは、乳がん細胞を休眠させる働きをしている可能性が報告されています。
(7)生姜のエクソソームは、アルコール性の肝障害を予防する働きがある可能性が報告されています。
(8)ドラゴンフルーツのエクソソームは、抗酸化作用がある可能性が報告されています。
(9)腸内の乳酸菌が、ヒトの免疫を活性化するのは、乳酸菌が放出するEVが重要な働きをしている可能性があることが報告されています。
(10)細菌叢において、細菌間の役割分担や細菌間の水平伝搬に、細菌が放出するEVが重要な働きをしている可能性が報告されています。

これらの報告について、私が気になるのは、「エクソソームを含む細胞外小胞(EV)」は、多種多様であり、ひとくくりに、1つの単語(エクソソーム、とか、EV)で語ってしまうのは、どうだろう、ということです。つまり、エクソソームの脂質二重膜に発現しているタンパク質や糖鎖やMHCは、細胞によって多種多様で、さらに、二重膜の内部に含まれている、タンパク質、miRNA、mRNAの種類や組成についても、多種多様。また同じ細胞から産生されるエクソソームであっても、その細胞の状態(例えばストレス下かどうか、など)によって、エクソソームに含まれる物質が変化すると、言われているからです。

私が思うに、エクソソームは、まるで、細胞が生み出した、核のない細胞の様であります。核のない細胞といえば、赤血球や血小板がありますが、エクソソームは、それらよりも100分の1くらい小さいです。エクソソームは細胞ではありませんが、CD9などの抗原や、糖鎖があり、MHC分子もあるので、私は、個人的には、小さな「細胞」だと言ってもいい様な気がしています。

問題点に関してですが、エクソソームについて、その精製方法や、エクソソーム内容物の成分や量の表示方法、それを人体に投与する場合の安全基準についても、何も決まっていません。精製方法が一定せず、決まった定量方法や、決まった品質規格項目がないので、何もかもがバラバラで無秩序な状態です。黎明期にはありがちな現象ですが、今後を見守っていきたいと思います。

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