「タンパク質の発現」、「遺伝子の発現」?

雑感、その他

生命科学の場面で、よく「タンパク質の発現」という言葉が使われます。
「発現」という言葉の意味を調べてみました。

  「現われ出ること」。または、「表し出すこと」

使用例して、「個性の発現」があります。これは、「内在的な個性が表(おもて)に現れ出ること」という意味になります。「発現」は、英語では、”Expression”。”Expression”を日本語にすると、「表現」とか「表情に出ること」という意味になります。総合的に考えると、「内在的なものが、表(おもて)に現れ出ること」という意味になると思います。

生命科学の場面で使われる、「タンパク質の発現」という言葉で、「表に現れ出ること」というのは、おそらく、試薬などを使って、特定のタンパク質の存在が確認できるようになること、つまり、簡単に言えば、タンパク質ができること、を意味するのだと思います。また、「内在的なもの」に該当するのは、ここでは、mRNA(メッセンジャーRNA)だと思います。mRNAが翻訳(Translation)されて、タンパク質ができること。それが「タンパク質の発現」の意味だと思います。

使用例としては、「新型コロナのmRNAワクチンを注射して、人の細胞の細胞膜に、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を発現させる」。

タンパク質の発現場所は、必ずしも、細胞膜だけに限ってはいないと思います。細胞質に漂っていても、また、細胞膜から外に出て行っても、構わないと思います。とにかく、特定のタンパク質ができること、それが「タンパク質の発現」という意味だと思います。

タンパク質の発現は、必ずしも細胞の中で発現するとは限りません。「無細胞タンパク質発現」というものもあります。これは、試験管の中に、コムギ胚芽等の細胞抽出液と、mRNAと、タンパク質の原料であるアミノ酸、そしてエネルギー源であるATPなどを入れて、タンパク質を合成する技術です。

一方、生命科学で、「遺伝子の発現」という言葉も、よく耳にしますが、この言葉の使い方って、変じゃないでしょうか。まともに考えれば、「遺伝子ができること」、「遺伝子が表に現れ出ること」。ん? これって変ですよね。

「遺伝子の発現」の意味は、高校生物の教科書には、「遺伝子がはたらいてタンパク質が合成されること」と書いてあります。であれば、遺伝子がはたらいて「タンパク質が発現する」なのではないでしょうか。「遺伝子の発現」という言葉は、「タンパク質の発現」を含んでいる、ということなのでしょうか?
さらに言えば、遺伝子からmRNAに塩基配列情報が転写されても、miRNA(マイクロRNA)によって、mRNAからタンパク質への翻訳が邪魔される場合だってあります。これって、遺伝子は発現しなかったことになるのでしょうか? 頭がこんらががってきました。

昔、まだ、miRNAやその働きが確認されていなかった頃は、遺伝子からmRNAに塩基配列情報が転写されたのち、必ずタンパク質への翻訳がされるものと思い込んでいたのだと思います。だから「遺伝子の発現」の意味は、「タンパク質の発現」も含めてしまったのだはないでしょうか。

専門用語の暗記が苦手な私の戯言(たわごと)でした。

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