人工甘味料と腸内細菌叢

腸内細菌叢

人工甘味料といえば、私はよく、砂糖の代わりに、コーヒーに入れて飲んでいます。糖質ゼロ、とか、カロリーオフ、とかいった謳い文句の飲料水の多くは、この「人工甘味料」が使われているのだと思いますが、最近ずいぶん多くなった印象です。

日本では、人工甘味料が、食品添加物として以下のものが認可されています。1983年にアスパルテーム、1999年にスクラロース、2000年にアセスルファムリウム(アセスルファムカリウム)。

最近になって、これらの人工甘味料のうちいくつかは、腸内細菌叢に対して悪い影響が出ることが、次々と報告されています(参考文献1から6を参照)。当初、人工甘味料に対する安全性の検証では、主に発がん性に関して検証されましたが、腸内細菌叢への影響については検証されなかった様ですね。また、人工甘味料による長期間での影響を検証したのは、おそらくマウスを使って検証したのだと思いますが、マウスとヒトとでは、腸内細菌叢はずいぶん違います(参考文献(7))。

この様に、ライフサイエンスは、まだまだわかっていないことが多いです。厄介なことに、腸内細菌は、いろいろな国にお住まいの人によって大きく異なる、ということです(参考文献(8))。ですので、アメリカで腸内細菌に関する論文が出ても、それは必ずしも日本にも当てはまるとは言えないのです。

腸内細菌は、約100兆個、私たちの腸に住んでいるそうです。私たちの体の細胞数は、約37兆個だと言われていますので、体の細胞数よりも、腸内細菌の数の方が多いのであります。そういう腸内細菌ですが、今まで研究を妨げていた理由は、腸内細菌の多くは培養できないからだそうです。最近ようやく、シングルセルRNA-SeqやDNAシーケンサーが登場して、腸内細菌についても、調べやすくなってきました(メタゲノム解析等)。今後はもっと、腸内細菌叢に関しても配慮して、研究。開発していただきたく思います。

ということで、今回のように、腸内細菌叢に関係のある話題は、今後、「腸内細菌叢」というカテゴリーにしたいと思います。よろしくお願いします。

<補足>ライフサイエンスの科学者にお願いしたいことがあります。私は、ライフサイエンスの科学者と一般の人の間の架け橋になろうと努力していますが、ライフサイエンスの科学者と、一般の人は、決して川の両岸で対峙する存在ではない、ということです。一般の人の集まり、つまり一般社会の輪の中に、ライフサイエンスの科学者は、住まわしてもらっている、という構図であることを認識していただきたいのです。そして「ライフサイエンス」とは「生命科学」であると同時に「生活科学」でもあるということです。ライフサイエンスは医療のためだけでなく、食品、洗剤、化粧品、そういった生活に直結するものも含めて「ライフサイエンス」なんだ、ということを、改めて認識していただきたく思います。

(1)nature 2014年
 Sugar substitutes linked to obesity
 https://www.nature.com/articles/513290a

(2)NIH National Library of Medicine 2021年
 Inhibitory Effects of Artificial Sweeteners on Bacterial Quorum Sensing
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34576027/

(3)Cell 2022年
 Personalized microbiome-driven effects of non-nutritive sweeteners on human glucose tolerance
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35987213/

(4)natureダイジェスト 2014年
 人工甘味料が肥満を引き起こす?
 https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v11/n12/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%94%98%E5%91%B3%E6%96%99%E3%81%8C%E8%82%A5%E6%BA%80%E3%82%92%E5%BC%95%E3%81%8D%E8%B5%B7%E3%81%93%E3%81%99%EF%BC%9F/57886

(5)日本経済新聞 2022年
 人工甘味料が腸内細菌乱す可能性 血糖値に影響も
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD206FD0Q2A920C2000000/

(6)Yahoo! ニュース 2023年
 https://news.yahoo.co.jp/articles/5c90f267684987897e681ee2d275de2909e2ae83

(7)科学と生物
 https://katosei.jsbba.or.jp/index.php?aid=1562

(8)<連載> 腸サイエンスの時代
 日本人の腸内細菌、その特徴はなに? 米国や中国となぜ違う?
 https://www.asahi.com/relife/article/14339144

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