健康長寿への挑戦

日本再生医療学会

(1)新型コロナ研究の進展
(2)健康長寿への挑戦 <==
(3)「ヘテロ」という言葉
(4)エクソソーム製剤
(5)実験解析のニュートレンド

日本再生医療学会の総会で、私が感じたこと。今回の話題は、「健康長寿への挑戦」です。今回は、内容豊富です。
近年、「老化」とはなんなのか、という研究が盛んに行われるようになりました。古い話では、2000年ごろ、寿命を延ばすという「サーチュイン遺伝子」が発見されました。2017年に、その遺伝子の実態について明らかになっています(参考1)。「老化遺伝子」が発見されたりもしています(参考2)。ここ数年は、「老化細胞」を除去すれば若返る(参考3)、とか、話題になったりしていて、百花繚乱の程をなしています。

私の感想ですが、これらの個々の研究は、「老化」という複雑で大きな現象の一端だけを捉えてしまってはいないでしょうか。さて、日本再生医療学会の総会で私が聞いたことについて、私の印象に残っていることだけを、お伝えします(大部分、忘れましたが(暴))。

まずその前に、「老化細胞」について、今までにネット等に研究発表されてきたことを、まとめておきたいと思います。以下は、私見です。

放射線や化学物質やウイルス感染や酸化などによりDNAが壊れ、それが修復できなかった場合、また、外界に接する上皮細胞を供給する細胞(真皮、腸、気管支などにある線維芽細胞など)で、テロメアの短小化が起こった場合、あるいは、核DNAの複製エラーを起こし、DNAの修復ができなかった場合、そういった細胞は、アポトーシスする場合と、老化細胞になる場合とがあります。アポトーシスすれば、その細胞のかけらは、すぐに免疫細胞に貪食されます。老化細胞になった場合、通常は、周囲組織の再生促進という役割を果たしつつ、最終的には免疫細胞に貪食されます。しかし一部の老化細胞は、免疫細胞に貪食されず、長期間蓄積され、慢性炎症や周囲細胞の発がんの原因となります。一方、細胞内で、リボソームRNA遺伝子の不安定化等の要因による異常タンパクの発生や、ミトコンドリアDNAの複製エラーが生じ、オートファジーによる回収機能がそれらを回収しきれず蓄積した場合も、その細胞はアポトーシするか、老化細胞になるのだと思います(参考3)。一部の老化細胞が、どういう原因や経緯で、免疫細胞に貪食されず、蓄積されるようになるのかはよくわかっていません。(以上の私見が間違っていたらごめんなさい)。

<追記>ショウジョウバエの腸の場合は、役目を終えた細胞は「アポトーシス」ではく「エレボーシス」するそうです。(参考)https://www.riken.jp/press/2022/20220426_2/ ヒトの腸の場合については、今、確認中だそうです。

さて、総会のシンポジウムでは、このような「老化細胞」あるいは「細胞老化」も含め、「老化」について、以下の研究発表がされました。
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 ●「老化細胞」は、単に細胞分裂を停止するだけでなく、組織の修復や再生を促している老化細胞と、慢性炎症や、線維化を発生する老化細胞との二面性があり、それを踏まえて骨格筋の急性炎症と、その再生に関する研究が発表されました(参考4)。
 ●筋肉の老化の防止に関する発表がありました。筋肉の老化の防止に、筋トレが良い(ミトコンドリアを増やす)と言われています。一般には、筋トレによって筋繊維が壊れ、それが修復される時に筋肉量が増大すると言われていますが、発表では、そういった証拠はない、とおっしゃっていたのが印象的でした。
 ●体性(成体)幹細胞の老化に関する発表がありました。体性(成体)幹細胞は、テロメアの短小化以外の要因で老化細胞になることは、当然、考えられます。幹細胞の周囲の組織が固くなることで、幹細胞が老化細胞になるケースについて、発表されていました。
 ●睡眠の断片化(レム睡眠、ノンレム睡眠の繰り返し頻度が増えること)が、老化を引き起こす、という発表がありました。視床下部が老化を制御しているそうです。視床下部は、全身への司令塔ですので、老化メカニズムの解明の要点だと思います(参考5)。
 ●長寿命で知られる「ハダカデバネズミ」に関する発表がありました。ハダカデバネズミは、細胞のDNAが壊れても修復能が高く、修復不可能な場合は、アポトーシスすることが多いそうです。
 ●老化細胞の一部は、その細胞膜に、PD-L1を発現している、という発表がありました。PD-L1は、がん細胞も発現している膜タンパクで、T細胞を不活性化させます。抗PD1抗体(オプジーボなど)を使えば、そのような老化細胞を(T細胞の働きによって)除去できる、という発表です(参考6)。また、GLS1阻害剤がターゲットとする老化細胞は、リソソーム膜損傷細胞であり、PD-L1も発現しているという、共通性に関する認識もされていました。

全体をまとめますと、バラバラな話がされていて、何のまとまりもなかったです(笑)。老化のメカニズムは、それだけ複雑なんですね。私自身は、老化対策として、家でステッパーをふみふみして、ミトコンドリアを増やしている今日この頃です。

(参考1)「長生き遺伝子の謎を解く」小林武彦
https://www.nig.ac.jp/nig/ja/research/interviews/close-up-interviews/close-up-interviews18

(参考2)「細胞老化を促進し寿命を制限するメカニズムを解明」小林武彦
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400205194.pdf

(参考3)「オートファジーを介した細胞老化の制御メカニズムを解明」吉森保、原英二
https://www.fbs.osaka-u.ac.jp/ja/research_results/papers/detail/1039

(参考4)「細胞老化システムから明らかにする組織の再生と変性メカニズムの探索」千見寺貴子
https://web.sapmed.ac.jp/anat2/research/ldlhvd00000002fq.html

(参考5)「哺乳類における睡眠及び老化を制御する視床下部特異的シグナル伝達系の解明に関する研究」佐藤亜希子
https://www.ncgg.go.jp/ncgg-kenkyu/documents/28/28xx-47.pdf

(参考6)「抗PD1抗体は老化細胞の免疫監視を強化し、老年病・生活習慣病を改善する」中西 真
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00200.html

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