実験解析のニュートレンド

日本再生医療学会

(1)新型コロナ研究の進展
(2)健康長寿への挑戦
(3)「ヘテロ」という言葉
(4)エクソソーム製剤
(5)実験解析のニュートレンド <==

日本再生医療学会の総会で、私が感じたことについて、発信します。今回の話題は『実験解析のニュートレンド』です。
今回の日本再生医療学会の総会では、シングルセルRNA-seq解析が普通に色々な研究で使われ始めました。
唐突ですが、白状しますと、今回は、私は、とんでもなく難しいことをテーマに選んでしまったと、反省しています。私はライフサイエンスの実験をしたことがなく、そのため、実験方法に関しては、ほとんど無知であります。

難しいことをわかりやすく伝える、と言うのが私、自称「ライフサイエンスコミュニケーター」の役目なのですが、実験方法をわかりやすく伝えるということは今までに経験がなく、今回のテーマは、私のレベルをはるかに超えた難しさがあります(汗)。

『今回の日本再生医療学会の総会では、シングルセルRNA-seq解析が普通に色々な研究で使われ始めました』

もう、この1行だけで、今回のブログを終了しようかと思いましたが、そういうわけにはいきませんよね(激汗)。

ということで、今回は、「感じたこと」や、「思ったこと」ではく、私が、0からスタートして、お勉強したことを、ご披露するブログになってしまいます。どうか、ご勘弁をお願いします。

今回、お勉強といっても、「シングルセルRNA-seq解析」は、高校や大学の生物の教科書のページをいくらめくってもどこにも書いてありません。ネット検索に頼ることになりますが、ネット検索しても、専門用語が機関銃のように私を攻撃するばかりで、心が折れてしまいそうになりました。

すったもんだして、なんとか、以下のことを学んだのですが、何せ魑魅魍魎としたインターネットから、私が独力で抽出・理解した結果ですので、間違っている箇所がたくさんあると思います。その点については、ご容赦ください。
まず、出発点は、「トランスクリプトーム解析」だと言うことに気がつきました(この出発点を見つけるだけでも大変でした)。

<1>トランスクリプトーム解析

細胞中に存在する全てのゲノム転写物(RNA)を網羅的に解析すること。
RNAは、ゲノムの一部を転写したものですので、「転写」の英語(Transcription)と、「全部」と言う意味の接尾語(-ome)を組み合わせて、トランスクリプトーム(Transcriptome)。通常のトランスクリプトーム解析では、全RNAのうちのmRNAを対象とし、rRNA、tRNA、miRNA等のノンコーディングRNAは対象とはしない様です。
例を挙げれば、光合成をする葉っぱの細胞が考えられます。葉っぱを光に当てて、盛んに光合成をしているだろうと言うタイミングで、葉っぱを摘んできてすりつぶし、DNAマイクロアレイを使って、発現しているmRNAの種類と量を調べます。夜にも、葉っぱを摘んできてすりつぶし、DNAマイクロアレイを用いて、発現しているmRNAの種類と量を調べ、日照時の葉っぱとの比較をします。この、DNAマイクロアレイを使う方法が、トランスクリプトーム解析の歴史的な出発点だったのだと思います。

 用語説明
   ・DNAマイクロアレイ: ガラス板に、さまざまな遺伝子を、高密度に格子状に貼り付けたもの
   ・ノンコーディングRNA: タンパク質の合成を目的としないRNA。mRNA(メッセンジャーRNA)以外の全てのRNA。”ncRNA”と書く場合もある。具体例:rRNA(リボソームRNA)、tRNA(トランスファーRNA)、miRNA(マイクロRNA)、など

<2>次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析

さて、その後、次世代シーケンサーが登場し、DNAの解析が容易になりました。トランスクリプトーム解析でも、次世代シーケンサーが使われるようになりました。次世代シーケンサーを使うトランスクリプトーム解析のことを、”RNA-seq”(RNA sequencing)と言うそうです。
RNA-seqでは、以下の処理ステップを実施します。

   (Step 1)サンプル内のmRNAを精製する。(不純物や、rRNAやtRNAなどを取り除く)
   (Step 2)逆転写酵素を使い、mRNAからDNAを合成(cDNA)する。
   (Step 3)cDNAを次世代シーケンサーで読み取り、遺伝子の種類と量に関する情報を得る。

この方法の特徴は、DNAマイクロアレイと違って、未知のmRNAを見つけることができる、ということです。また、DNAマイクロアレイは、調べる生物によって遺伝子のセットが異なるので、対象生物によって、異なるDNAマイクロアレーが必要となりますが、RNA-seqの方法だと、そういった必要はありません。
余談ですが、次世代シーケンサー(NGS:Next Generation Sequencer)としては、Illumina(イルミナ)社のシーケンサーが有名なようです。よく研究発表に貼ってある、次世代シーケンサーの写真は、イルミナ社のシーケンサーである場合が多いようです。

<3>シングルセルRNA-seq

1細胞ごとに別々に、RNA-seq法を用いて、トランスクリプトーム解析を実施するのが、シングルセルRNA-Seqです。細胞ごとに別々に解析するので、さまざまな細胞が混じっているサンプルに対して、細胞ごとの遺伝子発現パターンによって、細胞のクラス分け(クラスタリング)をすることができます。
いったいどういう方法で、1細胞ごとにトランスクリプトーム解析を実施するのか、については、興味深々でありますが、次回のブログで、私の勉強の成果をご披露したいと思います。

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