遺伝子治療について

雑感、その他

遺伝子治療について勉強しましたので、今回はそれをテーマにしたいと思います。以下は、私が勉強した内容です(間違っている箇所があったらごめんなさい)。

「遺伝子治療」という言葉は、何やら危険な匂いがしますが、最近の「遺伝子治療」は、危険性が薄くなってきているようですね。遺伝子治療とは、遺伝子を細胞に投与したり、細胞の遺伝子をゲノム編集したりする形態の治療です。体内から細胞を取り出し、体外で遺伝子治療し、その細胞を体内に戻す方法(ex Vivo)と、遺伝子治療製剤を、直接体内に投与する方法(in Vivo)とがある、とのことです。

以下は、私が考えた世代分けです。

<第1世代> 「遺伝子治療」という言葉は、「遺伝子を治す」という意味で用いられてきました。
 その方法としては、レトロウイルスベクターを用いてヒトの細胞にDNAを導入する、という方法が取られていました。その目的は、ヒトの体細胞の遺伝子に、有用な遺伝子を組み込むことでした。しかし、2002年に、発癌に関わるような遺伝子の近傍に遺伝子が組み込まれ、発癌遺伝子が活性化したため、白血病が誘発されたという悲しい出来事が起こりました(参考文献1)。

<第2世代> 遺伝子治療は、「遺伝子を治す」から「遺伝子で治す」も含むようになりました。
 ヒトの体細胞に、プラスミドDNAを導入する、という方法が使われ始めました。プラスミドDNAはゲノムに遺伝子が組み込まれる可能性は極めて低く、ヒトの体細胞の中でプラスミドDNAから、有用なタンパク質を発現させることができます。プラスミドは細胞の中で数週間で分解されてなくなるので、反復投与します。「遺伝子で治す」この治療方法は、遺伝病に限らず用いることができます。日本で、アンジェス社のコラテジェンが承認され、有名になりました。コラテジェンは、慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症)に対する治療薬です(参考資料2、3)。

 また、レトロウイルスの代わりに、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いて遺伝子導入する方法が開発されました。遺伝子治療に用いる、組み換え型のAAVベクターによって導入された遺伝子は、ヒトゲノムに組み込まれる可能性は極めて低く、ヒトの体細胞の中で、AAVベクターのDNAから、有用なタンパク質を発現させることができます。AAVによる遺伝子治療は、数ヶ月間は、効き目があるそうです。また、AAVには数多くの「血清型」が存在 し、血清型によって標的臓器への指向があったり、あるいは血液脳関門を通過できるものがある、という特徴があります。ただし、AAVに搭載できる遺伝子の大きさに制約(全長約5kb)がある、製造が困難、という短所もあります(参考文献4、5)。

<第3世代> ゲノム編集が注目され始めました。
 体内から細胞を取り出し、ゲノム編集し、体内に戻す治療方法が開発されました(ex Vivo)。CAR-T(キムリア)が、有名です。CAR-Tの場合、がんを攻撃するT細胞を患者の血液から抽出し、CARを発現するようゲノム編集し、それを体内に戻すという、がん治療の方法です。

<第4世代> 体内の細胞に対して、ゲノム編集を行う治療方法が研究されています(in Vivo)。
 標的細胞を絞り込む方法についても、研究されています。従来の、遺伝子を導入する方法では困難であった、悪い遺伝子の正確なノックアウトや、正確な修復が可能になりますので、悪い遺伝子によって引き起こされる病気に関しては、根治が期待できます。Casタンパクを発現する人工のmRNAと、標的遺伝子へのガイドとなるsgRNAを、LNP等で包んで製剤化し、それを静脈注射で投与する方法が考えられています(参考資料6、7、8)。

現在、第2世代と第3世代の遺伝子治療が、数多く承認されています(参考資料9)。意外に多くの遺伝子治療が承認されているのですね。

<参考文献>
(1) 日本の遺伝子治療研究の現状と課題 2012年
 http://www.nihs.go.jp/cbtp/home/Biologics-forum/BF9/DrShimada.pdf
(2) コラテジェン(ベペルミノゲン ペルプラスミド)の作用機序【重症虚血肢】 2020年
 https://passmed.co.jp/di/archives/7303#i-3
(3) コラテジェン筋注
https://www.pmda.go.jp/regenerative_medicines/2019/20190419001/111298000_23100FZX00001_F100_1.pdf
(4) レンチウイルスベクター・アデノ随伴ウイルスベクター技術の基礎と薬理学研究への応用
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/153/5/153_204/_pdf
(5) コスモバイオ アデノ随伴ウイルス(AAV)とは 
 https://www.cosmobio.co.jp/support/technology/a/adeno-associated-virus-aav-apb.asp
(6) 「ゲノム編集」とは?遺伝子治療への応用の可能性は?
 https://genetics.qlife.jp/interviews/dr-mashimo-20210215
(7) CRISPR/Cas9の静脈注射で夢の難病治療?
 https://www.setsurotech.com/media/crispr-210906/
(8) 臨床試験段階にある主なゲノム編集製品 (2023年4月時点)
 https://www.nihs.go.jp/mtgt/pdf/section1-3.pdf
(9) 承認された遺伝子治療(2023年4月現在)
 https://www.nihs.go.jp/mtgt/pdf/section1-1.pdf

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