mRNAのコード領域を「遺伝子」と呼ばないでください

雑感、その他

今回は、mRNA、あるいは、mRNAのタンパク質のコード領域(cording region)のことを、「遺伝情報」とか「遺伝子」とか「Gene」とか、呼んでいる研究者がおられます。また、mRNAのコードからタンパク質が作られることを「遺伝子の発現」と呼んでいる研究者がおられます。そのことについて、私の雑感をテーマにしたいと思います。今回のテーマは、私が、mRNAワクチン、mRNA医薬、そしてmRNAスイッチについて調べていた時に感じたことです。

一般の人は、「遺伝情報」とか「遺伝子」と聞けば、遺伝するものだと考えます。一般の人が考える「遺伝」は、細胞分裂してできる娘細胞への遺伝ではなく、自分の子供や子孫への遺伝、つまり、個体から個体への遺伝です。

また、一般の人が考える遺伝子は、自分の子供や子孫に伝わるすべてのものであって、タンパク質をコードする遺伝子に限定しているわけではありません。しかし研究者は、遺伝するしないに関係なく、タンパク質のコード領域を「遺伝子」、コードを「遺伝情報」と呼ぶ傾向が強いです。このことが、研究者と、一般の人の間に大きな溝を作っている、あるいは、混乱の元になっているように思います。

また、mRNAの設計図において、タンパク質のコード領域(cording region)に「Gene」と書かれている図を見かけることもあります。「Gene」は日本語に直すと「遺伝子」です。遺伝子はDNA上に存在するものですので、mRNA上にあるタンパク質のコード領域は、「遺伝子」ではないと思います。なぜなら、mRNA上にあるコード領域(cording region)は、自分の子供や子孫に遺伝しないからです。

研究者が、mRNAのタンパク質のコード領域を「遺伝子」と呼んでしまったことで、新型コロナワクチンのことを、新型コロナウイルスの遺伝子を人体に注射する「遺伝子ワクチン」と表現するマスコミやクリニックのお医者様が現れたりしました。これが引き金になって、新型コロナの遺伝子が自分の子供に遺伝する心配や、「遺伝子組換え」との類似性もあって騒ぎが大きくなり、厚労省が対処に大慌てするという事態になりました。そういう意味で「遺伝子ワクチン」という呼び方は不適切だと思います。研究者は「遺伝子」という言葉を使うことに、もっと慎重になって欲しく思います。

mRNAのタンパク質のコードの領域のことは、「遺伝子」と表現せずに「コード領域(Coding Region)」と表現する方が適切だと思います。また、mRNAからタンパク質ができることは、「遺伝子の発現」と表現せずに「タンパク質への翻訳」、あるいは、「タンパク質の発現」と表現していただきたく思います。

以下は、私が不適切だと思う、言葉の使い方をしてしまっている例です。

(1)NHK 「新型コロナと感染症・医療補情報」 「Q. 「遺伝子ワクチン」が働く仕組みは?」
『A. 新型コロナウイルスの遺伝子を使った「遺伝子ワクチン」が実用化されています。』
 https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/qa/detail/more-detail/qa_01_a08.html

(2)「ワクチンを打つ前に知っておくべきこと」
『ファイザー社やモデルナ社の新型コロナワクチンは、遺伝子を用いたmRNA(メッセンジャー RNA)ワクチンと呼ばれるものです。』
 https://www.nihon-u.ac.jp/catchup/research/307/

(3)「文書質問について」
『新型コロナワクチンは、人体にコロナウイルスの遺伝子をワクチンとして 注射する史上初の「遺伝子ワクチン」であり、』
 https://www.city.fuji.shizuoka.jp/shisei/c0409/rn2ola000002r5v7-att/rn2ola000003e2qz.pdf

(4)「核酸医薬・mRNA医薬の製造分析の基礎と基盤技術開発」
『一方、mRNA医薬はその名の通り、標的タンパク質の遺伝情報をコードしたmRNAを治療薬あるいは予防薬として用いるものである。』
 https://www.ssk21.co.jp/R0000103.php?gpage=06B0109

(5)「RNAとは?【がんRNA研究分野】」
『mRNAが保有する遺伝子情報を … 』  https://www.ncc.go.jp/jp/ri/division/cancer_rna/20211227164725.html

(6)2つの合成mRNAスイッチを活用した純度の高い細胞選別システムの開発
mRNA応答OFFスイッチ、mRNA応答ONスイッチの図に「Gene」という記述があります。
https://www.amed.go.jp/news/release_20220106.html

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